おかげさまで独立して無事1年を迎えることができました。
最初どうなるかはわかりませんでした。
独立して本当によかったのか、この1年自問自答の日々を送ってきましたが、思ったほどキツくはなく何とか生活できているので、自分語りとざっくりとした家計簿も併せて公表したいと思います。
今すぐ会社辞めたい、これから独立しようとお考えの方の参考になれば幸いです。
サラリーマンの年収のからくり
それまでの私の年収は330万円。
ではその330万円を全額自由に使えるかと言いますと、そうではないですよね。
まず、お給料をもらう前に所得税や住民税、社会保険料などが強制的に引かれます。私の年収で言うとざっくり年60万円ぐらいでしょうか。
そうなると残りは270万円ほどになります。世間ではこれを「手取り」とか「可処分所得」と呼んだりします。
でもお給料の中には通勤手当が含まれていますよね。通勤手当は通勤手段で使ってしまうお金なので自由に使えるお金とは言えません。(通勤手当をもらっているのに定期券を買わず遠方から自転車で通勤してくる強者も居たりします)
私の場合は遠距離通勤だったため、ざっくり年35万円ほどになります。
そうなると残りは235万円、これが実質的な「手取り」であり自由に使えるお金になります。
このカラクリは年収がアップすればするほど税金や社会保険料額がどんどんパワーアップして、すごく昇給したのに手取りはほとんど増えないという現象が発生します。
脱サラすると立ちはだかる社会保険料の問題
では脱サラをして個人事業を立ち上げたとするとどうなるでしょうか。
個人事業では国民健康保険に入る事になります。保険料額は前年の収入によって決まります。
個人事業が軌道に乗り、そのまま収入を上げていってしまうと保険料もどんどんパワーアップして稼いだ利益に猛烈に襲い掛かってきます。当然、稼ぎが少なくても相変わらず払わなければいけません。※国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は保険料免除制度・納付猶予制度があります
さらに独り身ならまだしも、家族を養っている場合は人数分負担が増えます。
これが脱サラすると最初に訪れる壁です。
個人事業でたくさん稼ぐのであれば問題ないかもしれませんが、フリーランスの収入なんて安定しないのは世の常。閑散期であっても社会保険料は容赦しません。
国民健康保険料を払えない場合は「延納」や「納付の猶予」も可能ですが納付期限もあり、払っていない期間が増えると年金が少なくなったり貰えなくなる可能性もあります。
なので私はずいぶんと前から独立を目指していましたが、社会保険料負担の壁に阻まれて躊躇していました。
個人事業主が入る国民健康保険・国民年金はサラリーマンの健康保険・厚生年金と違って扶養の概念が無く、遺族年金も子無し夫婦や18歳以上の子には無いので、支払う保険料に見合ったサービスでは無いと感じていました。
しかしある日のこと、「マイクロ法人」という手段を知ってから独立を決断することができました。
マイクロ法人の役割
私は独立にあたって個人事業の開業と、それとは別に法人も開業しました。その法人こそ「マイクロ法人」というやつで、マイクロ法人をざっくり説明すると一人社長の小さな会社の事です。
歴とした法人なので社会保険になりサラリーマンと同じという事です。扶養の概念があるので支払う保険料は自分一人分だけ、しかも支払う保険料は法人と折半です。
そして何と言っても標準報酬月額を抑える事により社会保険料を最低額のまま維持する事ができます。
後は個人事業で業績が伸びても減っても社会保険料の心配は不要という訳です。
ただし、マイクロ法人の維持費は会計ソフトや事業税、税理士報酬など合わせてザックリ年26万円ほどになりますが、サラリーマン同様の優遇を受けられるため必要経費と思って割り切りましょう。さらにこの恩恵は扶養家族が多いほどより効果的になります。
因みにマイクロ法人を設立する場合、個人事業と法人の業種を変える必要があります。例え個人と法人が別会計になっていても同業種の場合は同一収入源と見なされて税務署等から激しいツッコミが入る場合があります。
私の場合個人事業はクリエイター業、マイクロ法人は不動産業(大家業)にしており、私の実家だった一戸建て(5LDK)を賃貸にしています。※5LDK以上の物件は人気あり
そのため管理は全て賃貸管理会社にお任せしており、このマイクロ法人を維持する為に掛かる手間は家賃収入の会計以外ほぼありません。
なので社会保険や年金のことなどは一切気にせず個人事業に集中できます。
このまま75歳まであと20年間、労働もなく手間のかからない「サラリーマン」を続けられることになります。
余談ですが、私実家の土地建物は私個人所有で建物のみ法人へ無償返還の届出をして賃貸契約する小技を使っています。なので大家は法人になりますが私個人への賃貸料支払いは発生せず税金などの面倒事はありません。
収入はサラリーマン時代より減ってしまいましたが…
私のフリーランスとしての売上げはざっくり年150万。
本来ならそのうち1割は源泉所得税、もう1割は消費税を差し引かれます。
しかし大して稼いでいないため源泉徴収されていても還付金で戻ってきます。また消費税は売り上げ1,000万円に満たない免税業者にあたるので、これも私の収入になります。※消費税は2023年10月のインボイス制度がスタートすると簡易課税業者になるので売上は減ります
また個人事業の経費は10万円ぐらいなので年140万円が手取りになります。またマイクロ法人からの給料は手取りで年40万円ほどになるので、合わせて年180万円ほどでしょうか。
サラリーマン時代の手取りは年235万円なのに対し、独立したら年180万円に減ってしまいました。
ところが生活においては苦しさはないんですよ。
「退職金を切り崩して生活しているのでは?」と思われるでしょうが、その退職金は設備投資のために法人へ貸し付けているので退職金では生活していません。銀行からの借入もありません。
また投資信託のお金も取り崩していません。
それよりも思ったほど総資産は減っていませんでした。
今まで節約生活だったのは一つの理由かもしれませんが、かと言って独立してから生活の質を落とした覚えもありません。
思い当たるのは、妻の実家に義理両親と同居しているため家賃を支払っていない事でしょうか。もし家賃を払った場合月5万円程度の物件と考えると、年間60万円ほど浮いていると考えてもよさそうですね。
義理両親は自営業だったので収入といえば老齢基礎年金しかなく、私どもと同居していないと生活が成り立ちません。当然私夫婦の生活費は自分達で払っていますが、義理両親では出せない費用はこちらが負担しています。
収入は減りましたが、それよりも生活にゆとりが生まれました。
毎日の通勤ラッシュに揉まれる事も、業務の理不尽な要求に応える事も、体調不良にも関わらず無理して出勤する事もないストレスフリーで自由気ままな日々を送れています。これこそが求めていたセミリタイア(サイドFIRE)生活だと思いました。
2021年度のザックリ収支
個人事業:150万円、前職の給料(5月まで在職の分)135万円
トータル収入:285万円(手取り)
臨時収入:退職金310万円
生活支出:113万円
- 食費30万円
- 水道光熱費35万円
- 通信費8万円
- 保険等8万円
- 犬の食費6万円
- 夫婦の医療費:6万円
- 雑費20万円(ゲームのアカウント代、服飾、生活用品、生活雑貨等)
臨時支出:15万円(義理両親の飼い犬の治療費を立替え)
事業支出:500万円
- ※個人事業:Adobe CC、サーバー、freeeなどのサブスク代10万円ちょっと(固定)
- ※法人:社会保険料14万円(個人負担分)、社会保険料等16万円(会社負担分)、
- 事業準備:法人設立等15万円ぐらい、設備投資(リフォーム等)400万円近く、PC代28万円
※2022年2月に決算、税理士報酬?円、事業税6万円ぐらい(第1期10ヶ月分のため)
というわけで2021年度は総収入595万円-総支出628万円=マイナス33万円の赤字でした。
今後の年間収支予想
収入:個人事業の収入 約150万円 +マイクロ法人の役員報酬 約40万円(どちらも可処分所得)
維持費: 個人事業の維持費:10万円 +マイクロ法人の維持費:26万円
差し引き 154万円
これからは年間154万円で生活していくことになります。ただ、生活費はこれまで通り年113万円程度で抑えられるので今までと何も変わりません。個人事業を伸ばせばその分余裕が生まれることでしょう。
独立してから所得が減っていますが水道光熱費や通信費、車両費(ガソリン代のこと)などの一部は事業の経費(家事按分)にできますし、マイクロ法人で積み立てや余剰資金の運用なども行います。
今までの役員借入金の返済もあり、それに利息をつけることもできます。
よほどのことがない限り安定した収入を得ることがわかっていますので今のところなんとかやっていけそうです。
もし独立をお考えの方へ
これまでの切り口
これだけは申し上げておきますが、もし独立をお考えの方は先に足場を固めることを強くお勧めします。
私の場合は今から突然無収入になったとしても貯金で2〜3年は暮らせるほどの生活防衛資金(事業の資金とは別)はありますし、独立する時も法人の売上や個人事業の売上などの目処が立ってからでした。
ですから「銀行から借金して」「店舗や事務所を大きく構えて」「独立してから顧客を探す」なんて身に余ることは考えないようにしましょう。そんなリスクはもはやビジネスではなくギャンブルです。
少なくとも「十分な貯金で借金しない」「初めは自宅や小さな店舗で」「独立前から顧客を獲得しておく」これらをできれば3つとも押さえておくことが失敗しない独立、失敗しても再起が図れる独立の大前提だと思っています。
「アマゾン創業時 写真」で画像を検索してみてください。かの大企業Amazonですら創業時は小ぢんまりとした部屋でDIYしたであろう机にパソコン1台という時代があったのです。かのAppleでも、最初は自宅のガレージから出発したのです。
これからの切り口
貯金で2〜3年は暮らせるほどの生活防衛資金(事業の資金とは別)を用意しておくことは重要ですが、これからの時代は個人が企業をM&Aする時代になるでしょう。
今の日本、少子高齢化なのは誰しもご存知でしょうが実はもっと深刻な問題に優良企業が後継者不在のために廃業してしまうという事です。
第一次ベビーブームの団塊の世代が後期高齢者を迎える2025年問題。そうなると後継者もいない優良な会社・人気の老舗飲食店は今後120万社以上廃業してしまう恐れがあります。
そこで事業継承という形で起業するのです。
1から始める起業より、人気の会社を継承した方がリスクも少なく、継承してもらえる経営者や従業員にとってもありがたく、顧客も安心する理想的な形となります。
ぜひ検討してみてください。
まとめ
独立して低年収でも生活できている理由
- 子どもがいないので教育費や養育費は考えなくてもOK
- 義理両親と同居のため家賃は払っていません
- 生活水準を上げないようにしています
- お金のかかる趣味はやりません、できません、知りません
- 収入が少ないと税金はかなり抑えられます(貧乏はお得です!)
独立して良かったと思ったこと
独立して感じたデメリット
結論:収入は激減したが悔いはなし!
サラリーマン時代と比べると、毎日まったりと過ごしています。これが自分が求めていた人生ですから。ですが他人には絶対お勧めしません。人それぞれ立場も環境も背負っているものも違いますから。