もし、あなたのご両親が亡くなり土地と建物を相続したら、土地と建物の所有者を変更する必要があります。
今回は、私が土地と建物を相続することにあたり、手続きにあまり詳しくない私が法務局へ登記移転手続きをした体験談を書いていきます。
※この解説は土地・建物が個人の所有になっている前提ですので、建物または土地が賃貸や、複数の相続人など複雑な場合は行政書士さんにご相談される事をお勧めします。
私の場合、それまで固定資産税を払っている=土地・建物の所有者と勘違いしていました。今回の件で固定資産税は市区役所、所有者の登記は法務局と全く別なのに気づけて良かったです。
不動産を相続したら…
不動産を相続したら、まず移転登記申請をすることになります。
そこで、登記と名の付く事はまず法務局というわけで、早速法務局のホームページを検索します。
法務局トップページのメニューに不動産登記申請の項目があるのでクリックすると、どのような手続きに該当するかわかりやすく掲載されています。
私の場合は父が亡くなり相続が発生したので「不動産の所有者が亡くなった」をクリックします。
さっそく4つの選択肢が出てきました。
私の場合は事前に同じく相続人である弟と遺産分割協議を終えていたので「遺産分割協議による相続(相続人全員で話し合いをする場合)」を選びました。
この辺りは相続で揉めている間は移転申請できないので、まずは遺産分割協議を済ませるなり遺言書に従うなり法定相続を選択するなりして解決しておきます。
資格を持たないものが他人の登記登録を代理ですることは有償無償に関わらず違法ですのでご注意ください。
自分で用意できる書類はあらかじめ集めておきましょう
自分で集められる書類は自分で用意しましょう。
司法書士さんに頼むか自分で取り寄せるかで手数料などを節約できたりします。
もし司法書士さんに頼む場合は委任状が必要になります。
戸籍謄本などは役所に郵送で申請できるので役所のHPなどで調べてみてください。
物件が遠方の場合費用面でどの手段を選ぶか計算してみましょう。
旅費や休暇取得(平日しか作業が進めないため)などを考慮して現地の司法書士さんに依頼した方が返って安くなることもあります。
集める、または作成する書類は以下の8種類
1. 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した原戸籍
難易度:★★★★★(出生地による) 費用:およそ1通750円×ページ数(10ページなら7,500円)
亡くなった方の出生地の役所へ出向いて、または郵送で取り寄せる事になります。
改製原戸籍謄本または原戸籍を請求するときは「はらこせきまたは縦書きのはらこせきをお願いします」と言うと理解が早いです。※後に出てくる戸籍謄本「こせきとうほん」とは違いますのでご注意ください。
私の父は出生当時愛知県南陽村でしたが名古屋市港区に合併したので名古屋市の港区役所へ出向きました。
父は兄弟が多く、しかも一旦分家してまた本家に戻るといった複雑な家系だったので、まるで一冊の本になりました。もちろん発行手数料はページ分必要なので結構な金額になりました。
また出生地から今の住所へ越してきたので亡くなった時点の住所地の役所からも原戸籍を入手します。
これで「出生から死亡までの連続した戸籍」を揃えることができました。
もし出生地がわからなくても戸籍の転出先を辿ることで出生地に行き着くことができます。
2. 被相続人(亡くなった方)の住民票の除票
難易度:★★(最後の住所地による) 費用:1通 300円ぐらい
亡くなった時点の住所地の役所で本籍の入った住民票除票を入手します。同じ世帯であった場合はすぐに取得できます。
また亡くなった人が一人世帯だった場合は、相続人であることが分かる書類(戸籍関係)を提示することで取得することができます。
上記の原戸籍と同様に郵送請求できますが、手続きには上記と同様に戸籍関係を証明する書類が必要ですので役所にお問い合わせください。
3. 相続人全員の戸籍謄本
難易度:★ 費用:1通 450円ぐらい
相続人全員の戸籍謄本(本籍が入っているもの)それぞれ本籍地の役所で取得します。
私の場合は現住所と本籍地が違っていたのでそれぞれの地で取得する事になりました。
現地のコンビニで発行できる場合があります。
4. 遺産を相続する人の住民票
難易度:★ 費用:1通 300円ぐらい
この場合、不動産は私だけが継ぐ事になりましたので私の住民票だけ必要になります。
相続する人が複数ならそれぞれ必要になります。それぞれの現地コンビニで発行できる場合があります。
5. 遺産分割協議書
難易度:★★★★(相続人の数による) 費用:自分で作成すれば0円・司法書士さんに依頼すると数万円〜十数万円
相続人全員の署名捺印(印鑑登録された実印を押印)がされた遺産分割協議書を作成します。
原則的には司法書士さんに依頼して作成します。
しかし私はネットで調べ法務局HPの作成例に添えば自分でできると思ったので自分で作ってみました。(最終的に司法書士さんにチェックしてもらえたので大丈夫だと思います。チェックしていただいた司法書士さんに感謝です。)
遺産分割協議書は相続人全員分の枚数(2人なら2枚、3人なら3枚)を用意し、全てに全員の署名と実印の押印が必要で相続人全員が各1枚保管します。※全員が原本を持つ状態。
6. 相続人全員の印鑑証明書
難易度:★ 費用:1通 300円ぐらい
遺産分割協議書に押印した実印の相続人全員分の印鑑証明書が必要です。コンビニで発行できる場合があります。
7. 固定資産評価証明書
難易度:★★(物件の所在地による) 費用:1通 300円ぐらい
登録免許税を算定するための資料として必要です。これによって購入すべき印紙代が算出されます。不動産がある管轄地域の役所で税務関係窓口にお尋ねください。
8. 相関関係説明図
難易度:★〜★★★★(相続人の数による) 費用:自分で作成すれば0円・司法書士さんに依頼すると数万円〜100万円以上
不動産の相続手続きをする場合、除籍謄本・改製原戸籍謄本・戸籍謄本の原本は提出すると戻ってきません。しかし相関関係説明図を作成して原本還付請求をすれば原本を返却してくれます。
そして不動産の場合、土地だけでなく建物の登記にも原本が必要です。
しかし、専門家に依頼して相関関係説明図を作成するより戸籍謄本の原本を複数用意して、原本を提出した方が安く済むなら作らなくてもいいでしょう。
任意. 法定相続情報一覧図(銀行・不動産などの手続きで必要になる書類を減らせます)
難易度:★〜★★★(相続人の数による) 費用:自分で申請すれば0円・司法書士さんに依頼すると数万円〜
法定相続情報一覧図は相関関係説明図とよく似ていますが、法定相続情報一覧図は法務局で発行してもらう公文書です。
手続きに必要な書類は上記項目の1.〜3.と申出人の身分証明書(免許証、マイナンバーカード、住民票の写しのいずれか1つ)の4つです。
この書類の利点は銀行・不動産などの手続きで必要になる書類を減らせるので、銀行口座が沢山あったり複数の不動産の手続きがある時に助かります。(金融機関が対応しているか確認)
一度に多くの発行枚数を請求できるので、手続きに必要な数+予備1枚を申請しましょう。例)5つの金融機関で5枚、不動産(土地と建物が2箇所)で4枚、予備で1枚の場合なら合計10枚を請求。
資料が集まったら専門家にチェックしてもらおう
とりあえず必要な書類が用意できたら司法書士さんにチェックしてもらいましょう。私は地方法務局の無料相談会がタイミングよく開催されていたので早速予約を申し込み、チェックしてもらいました。
足りない書類や登録免許税の算出などチェックしてもらい、完全に揃えたところで別件で依頼する司法書士さんにも最終チェックをしていただきました。そうして問題なく提出できる状態までフォローしていただき非常に助かりました。
書類一式を持参したら相談員の方にびっくりされました。でも、おかげで相談はスムーズに進めることができ充実した相談ができました。それでも30分という制限時間いっぱいまで掛かってしまったので必要書類は事前に揃えておいた方が良いです。
法務局で無事登記完了!
法務局へ土地の登記移転届を提出すると、10日後に登記完了予定との事だったので、完了予定日の翌日に「登記識別情報」を受け取りに行きました。
この登記識別情報はいわゆる「権利証」と呼ばれるものでこの権利証を持っている者がその不動産の所有者となるものです。そしてこれは「土地」と「建物」が別々の登記になります。
よく昔のドラマで土地の権利書が奪われて一家路頭に迷うみたいな話がありますが、その権利証である登記識別情報はそれぐらい重要な書類です。
この登記識別情報にはアルファベットと数字の符号が記されているらしいのですが、盗み見されると権利の盗難にあう恐れがあるとのことで予め目張りされています。
なんでもその符号を知っている人=所有者として扱われるみたいで「なにそれ怖い」と思いました。
ただし奪われたところで盗難届や法務局への不受理届けで所有権の移転は無効にできるので実際にはありえませんが、盗人がそれを使って第三者へ売却し、成立してしまうとかなり厄介な事になりますので注意が必要です。
土地と住居の登記は別物です
無事に土地が終わりましたので次は住居の登記になります。しかし私の父は建物の登記に結構なお金がかかることを嫌って建物の登記だけしていませんでした。
なのでここで初めて住居の登記をすることになりました。(このケースは珍しくないかもしれません)
住居の登記の為に土地家屋調査士に依頼し、正確な調査・測量が必要になります。
いくらなんでも資格のない素人の私ではそこまでできませんので、そこは土地家屋調査士さんにお願いしないといけません。
ただ、土地家屋調査士さんのほとんどは司法書士さんと一緒にお仕事されているので、依頼する場合は司法書士さんに全てお任せすれば大丈夫です。
土地の登記で使用した戸籍関係の書類一式が返還されてきたので、今度は住居の登記のために司法書士さんに郵送しました。ちなみに調査・測量と登記手続きの費用として十数万円かかります。つまりこの費用を私の父は出し渋ったのです。
少々高いと感じるかもしれませんが、これをクリアしないと建物を売ることも貸すこともできません。
せっかくの財産です。登記していなければ売買が成立できないため結局登記手続きする事になりますから、不安な方は一度所有者に聞いてみるか役所の税務課で聞いてみるのが良いでしょう。
余談:相続が争族にならないために
遺言書(いごんしょ)は後々禍根を残さないためにも作っておいた方がかなりオススメです。なぜなら、いきなり顔も知らない相続人が現れる可能性だってあります。
特に子供のいない夫婦のどちらかが亡くなって相続する場合は要注意です。たとえ死亡から10年経っていても死亡を知らなかった法定相続人(配偶者の兄弟など)が死亡を認知しだい「相続回復請求権」を主張してくるかもしれません。
今回の私はシンプルな相続関係だったため遺産分割協議書の作成に苦労はしませんでした。
ですが法的に正当な相続人である親戚が現れて遺産を分けてくれと言った場合、無益な争いに発展しかねません。
でも安心してください。遺言書があれば法定相続よりも遺言書が優先されます。そして遺言書を作るなら法的に効力のある様式で作成された方が安心です。
そこで遺言書を作りたい場合は最寄りの公証役場に相談しましょう。
ちなみに役所と銘打ってありますが市区役所とは全く関係なく法務局管轄の公的機関です。
大掛かりな建物ではなく一般的なオフィスビルやマンションの一角に入居していたりしますが安心してください。
公証役場で作成することもできますし、専門家のサポートのもとで自分で作成した証書を公証役場に預けることもできます。手数料は遺産総額にもよりますが数万円ほど掛かるので事前に相談しましょう。
「ゆいごん」は家族に言い残す言葉や文筆などの広い意味で使われる言葉で使われ「いごん」は法的効力のあるものとして専門家が使っているそうです。ゆいごんだけでは法的効果は薄いとされるようです。
まとめ:登記移転届は素人でもできる
この試みは法務局や自治体役所などに出向いたり相談会に参加するなど平日に自由に動けた私だからこそ、必要最低限のお金でできた結果であります。
この私と同じく挑戦しようと思われてもサラリーマンの場合は平日思うように動けなかったり調べ物もやり辛いかと思います。
そのような時はぜひ専門家である司法書士さんにご相談ください。
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