1923年ドイツで起きたハイパーインフレーション。その出来事で数ある逸話の中でも教訓になるお話をご紹介します。
この逸話は正式な出展先を見つけることができなかったため、さまざまな検索結果を基に私個人が創作した物です。
まずは1923年ドイツの時代背景

写真は5兆パピエルマルク(Papiermark)ウィキメディアより引用掲載
今から100年前の1923年、ドイツで起きたハイパーインフレーションは、経済史上最も有名なインフレーションの一つで、ドイツの通貨である「パピエルマルク(Papiermark)」の価値が暴落し、通貨の価値を失ってしまった事件です。
第一次世界大戦後のドイツは、賠償金の支払いや経済の不安定さなどにより経済的に困難な時期に直面していました。政府は資金を調達するために多額の紙幣を発行し、印刷機が稼働し続けました。これにより、パピエルマルクの供給が増え、通貨の価値が急速に減少していくこととなりました。
「図説西洋経済史」によると、卸売物価指数は1913年を1とした場合、1922年の時点で450となっていましたが、23年1月には2800、同年末には1兆2000億と天文学的数字に高騰しました。
また、「全訳世界の歴史教科書シリーズ15 西ドイツ4」によると、1923年11月末のベルリンでは、じゃがいも1kgが90,000,000,000マルク、卵1個が320,000,000,000マルク、ミルク1リットルが360,000,000,000マルク、バター1ポンドが2,800,000,000,000マルクだったようです。
ハイパーインフレーションの影響は甚大で、人々の貯蓄や給与は目減りし、生活は困難を極めました。通貨の価値が目まぐるしく変動するため、商品やサービスの価格も日々変動し、市場での取引が困難になりました。
このような状況を解決するため、1923年11月にレンテンマルクの創設が報じられると通貨は安定し、後の1924年に1兆パピエルマルク=1レンテンマルクの率で交換され、ドイツの通貨と経済を安定させる結果となりました。
ドイツのハイパーインフレーションは、経済史における重要な出来事であり、通貨政策の重要性やインフレーションがどれほど深刻な経済的影響を及ぼすかを示す一例としてよく取り上げられます。
真面目な兄と飲んだくれの弟の話
昔々、とある町に真面目な兄と飲んだくれの弟が暮らしていました。
真面目な兄はとても倹約家でした。
一生懸命働いて給料を沢山貰っているにも関わらず、日々の暮らしはとても質素で、少々無理してでもせっせとお金を貯め込んでいました。
一方で、飲んだくれの弟は毎日酒を飲んでいました。おかげで弟の家は酒の空き瓶で溢れかえり、足の踏み場もないほどになっていました。
真面目な兄は、こんなだらしない弟を不甲斐なく思い、毎日のように小言を言っていました。
それでも縋ってくる弟を見離すことなく、いつも生活費を援助してあげました。
この兄弟がこうなった理由は、その国は戦争をしていたからです。
兄は戦争で不安な将来に備えるために貯金をすることにしたのです。しかし、弟の方は将来に悲観して酒に溺れる日々を送ることになってしまいました。
そしてとうとう、その国は戦争で負けてしまい戦時賠償金を支払うことになったのでした。
その国の政府は戦時賠償金を支払うために紙幣を大量に印刷します。
しかし、ただ大量に紙幣を印刷するだけではお金としての価値や信用を失うばかり、お金の価値はどんどん下がっていきました。
ついに市場では、たくさんのお金を支払わないとパン一つさえ買えない事態となってしまったのです。
真面目な兄は、せっかく貯めた、かつて大金だった貯金はどんどん価値を失っていくばかりで意気消沈し、とうとう、その貯金を全額支払ってもパン一つさえ買えなくなってしまいました。
その一方で、飲んだくれの弟はというと、家に転がっていた空き瓶を売っては食費に充てていたので、なんとか生活できていたのです。
兄は日頃の小言を詫び、弟は兄を見離さずに助けました。
こうして、弟の空き瓶のおかげで兄弟共にこの窮地を脱することができたのでした。

私の父の話「高度経済成長」
私の父は過去に財形貯蓄を利用したことがあるそうです。
マイホーム実現のために財形貯蓄を始める当時、目標金額を100万円にしました。当時の100万円は現在で言う1,000万円以上の感覚だったのでしょう。なかなかの大金です。
父は生活を切り詰めて、少々無理してでも貯金しましたが、時代はちょうど高度経済成長期。どんどん給料も上がりボーナスも増えますが、同時に物価もものすごい勢いで上昇していきました。
そして、あれだけ切り詰めて頑張って貯金して目標金額に達成した頃には、既に100万円と言う金額は大した金額では無くなったと大変ガッカリしたそうです。
この場合のインフレは経済が成長中であり、物価は上がるが給料はそれ以上に上がるという理想的なインフレーションの状態です。
それほど高度経済成長は目まぐるしいものだったのでしょう。

世界的にはインフレーションにより経済が活況を呈しているのに、日本だけがスタグフレーションになっています
外貨や海外インデックスファンドなど日本以外の世界中が受けている恩恵に目を向けましょう
※スタグフレーションとはインフレーションと景気停滞が同時に起こる状態
まとめ:この物語で何を学び得るのか
この逸話は、一見「真面目にコツコツ貯金しても将来どうなるかは分からないから貯金は無駄な努力だ」と思いがちですが、真意はそこではありません。
もちろん貯金は大事です。しかし、この逸話で得られる教訓は、兄の「価値を失った貯金」ではなく、弟の「現金化できた実物」があった事で窮地を逃れられたところです。
そうです、兄の問題点は「資産のポートフォリオを貯金(現金)だけに絞ってしまった」ところです。同じく、私の父の問題点も同様に貯金(現金)だけに絞ってしまったところです。※ここでのポートフォリオは異なる資産クラスに分散してリスクを管理する意味で使用しています
では違うポートフォリオを考えてみましょう。
例えば、真面目な兄は、飲んだくれの弟の空き瓶よりも価値のある「金」などの実物(実物資産)にも分散させていたら、こんな窮地にも対応できたはずです。※実際にはデノミネーション(通貨の単位や価値を変更すること)などの影響で換金できない場合もあります
また、貴金属(実物資産)や株式、外貨(金融資産)などにも分散させていたら、もっとマシになっていたのかもしれません。私の父もこの時に財形貯蓄ではなく株式を買っていたらと思うと残念でなりません。
世界情勢が不安に陥ると金に交換しようとするために、金の価格が上がるというのは、まさにこの事から理解できると思います。
ここでは過去に起きたドイツでのお話ですが、私たちの日本でも今後起きうる可能性は十分あります。
貯金も大切ですが、資産が現金だけに一極集中してリスクに脆弱なポートフォリオにならないよう注意しましょう。



もちろん、お互い違う価値観であっても助け合える家族愛というポイントも押さえておきたいですね